こんにちは、ブログ「しらちご」専属ライターです。 今回は1976年(昭和51年)第1四半期のイギリスに焦点を当てます。
この時期の英国は、北アイルランド紛争(The Troubles)が本土ロンドンに飛び火し、市民生活が爆弾の恐怖に晒されていた時代です。しかし、政治的暴力の影で、後に「英国犯罪史上最悪」と呼ばれるシリアルキラーが、その残虐性を飛躍的にエスカレートさせていた季節でもありました。 地下鉄での銃撃戦、凄惨な処刑、そして52回もの刺突。 霧のロンドンから荒涼としたヨークシャーまで、英国全土を覆った「血の冬」の事件ファイルをご覧ください。
1976年1月〜3月 英国・猟奇殺人/重大犯罪リスト
1. キングスミル虐殺事件
- 発生日時: 1976年1月5日
- 事件名: キングスミルの虐殺(Kingsmill massacre)
- 場所: 北アイルランド・アーマー州
- 犯人: 南アーマー共和派行動部隊(IRA暫定派の偽装組織とされる)
- 被害者: プロテスタント系労働者10名死亡、1名重傷
- 概要: 帰宅途中の繊維工場労働者たちが乗ったミニバスが、武装集団に停止させられた。犯人グループは乗客に対し「カトリック教徒は前に出ろ」と命令。唯一のカトリック教徒が走り去ることを許された直後、残された11名のプロテスタント教徒に対し、至近距離から自動小銃(AR-18等)が乱射された。10名が即死したが、1名(アラン・ブラック)だけが18発もの銃弾を受けながら奇跡的に生還した。
- プロファイリング要素(選別と処刑): 【宗派という名の選別】 被害者個人の資質とは無関係に、所属する「属性(宗教)」のみで生死を選別する極めて冷徹な犯行。前日に起きたカトリック教徒殺害への報復(Realiation)とされるが、無抵抗の民間人を並ばせて処刑する手口は、軍事行動の域を超えた虐殺(Massacre)であり、集団心理による道徳的責任の麻痺(Deindividuation)が見て取れる。
2. グラスゴー姉弟惨殺事件
- 発生日時: 1976年1月17日
- 事件名: マクモニグル姉弟殺害事件(Govan Double Murder)
- 場所: スコットランド・グラスゴー(ゴーヴァン地区)
- 犯人: アレクサンダー・ミラー(Alexander Millar / 当時27歳)
- 被害者: ジョン・マクモニグル(13歳)、アイリーン・マクモニグル(12歳)
- 概要: グラスゴーの集合住宅(テナメント)で、留守番をしていた幼い姉弟が侵入者に襲われた。二人は縛り上げられた上で、頭部を激しく殴打されるなどして惨殺された。犯人のミラーは現場から逃走し、スコットランド警察史上最大級の捜索網が敷かれた(後に逮捕・無期懲役)。
- プロファイリング要素(家庭内の侵食): 【サンクチュアリの崩壊】 最も安全であるはずの「家」の中で、抵抗できない子供たちが標的になった事件。窃盗目的の侵入が、住人との遭遇により突発的な殺人へと暴走した可能性があるが、子供二人を拘束した上での殺害には、単なる口封じを超えたサディスティックな支配欲が窺える。
3. ヨークシャー・リッパー第2の殺人(エミリー・ジャクソン事件)
- 発生日時: 1976年1月20日
- 事件名: エミリー・ジャクソン殺害事件(Murder of Emily Jackson)
- 場所: リーズ(Leeds)
- 犯人: ピーター・サトクリフ(Peter Sutcliffe / 通称:ヨークシャー・リッパー)
- 被害者: エミリー・ジャクソン(42歳)
- 概要: 前年10月のウィルマ・マッキャン殺害に続く、サトクリフによる2件目の殺人。彼はエミリーを車に乗せた後、ハンマーで殴打して無力化。その後、プラスドライバー(フィリップス型)を使用して首、胸、腹部を52回にわたり突き刺した。さらに、犯人は被害者の太腿に自身のブーツの跡(Boot print)を明確に残して立ち去った。
- プロファイリング要素(オーバーキルと署名): 【性的サディズムの爆発】 52回という刺突回数は、被害者の死を目的とする以上の「過剰殺傷(Overkill)」であり、犯人の抑えきれない性的興奮と怒りの放出を示している。太腿に残されたブーツ痕は、被害者を「所有物」あるいは「踏みつけるべき汚らわしいもの」とみなす犯人の歪んだ優越感の表れ(Signature)である可能性が高い。
4. ウェストハム駅テロ・銃撃戦
- 発生日時: 1976年3月15日
- 事件名: ウェストハム駅爆破・銃撃事件(West Ham station attack)
- 場所: ロンドン・ウェストハム駅
- 犯人: ヴィンセント・ドネリー(Vincent Donnelly / IRA暫定派)
- 被害者: ジュリアス・スティーブン(運転士・死亡)、他負傷者多数
- 概要: 地下鉄メトロポリタン線の車内で、IRAメンバーのドネリーが所持していた爆弾が早期爆発した。混乱の中、逃走を図るドネリーを勇敢な運転士ジュリアス・スティーブンが追跡したが、ドネリーは銃を取り出し彼を射殺。さらに追跡してきた郵便局員も銃撃した後、ドネリーは自らの胸を撃って自殺を図ったが、一命を取り留め逮捕された。
- プロファイリング要素(自暴自棄の凶行): 【窮鼠の無差別暴力】 計画的なテロが失敗(早期爆発)した直後の、パニックと殺意が入り混じった犯行。追い詰められた犯人が、市民や職員に対し躊躇なく引き金を引いた点は、彼が「大義」よりも「自身の逃走と破壊」を優先する精神状態にあったことを示している。公共交通機関という閉鎖空間での銃撃戦は、都市型テロの最も恐ろしい形の一つである。
姉妹探偵の事件考察
【担当】
- 榎本 佳穂(Enomoto Kaho)
- 陸奥 凛音(Mutsu Rion)
佳穂: 「1976年初頭の英国……。興味深いわね。政治的な『集団狂気』と、個人の『性的サディズム』が同時にピークを迎えている。 特にピーター・サトクリフの事例(エミリー・ジャクソン殺害)は、犯罪心理学の教科書に載るレベルの『オーバーキル』よ。52回の刺突。これは殺害手段ではなく、遺体というキャンバスを使った自己表現ね。ドライバーという工具(Tools)を選ぶ点にも、労働者階級としての彼のアイデンティティと、女性を『修理(あるいは破壊)すべき物体』と見る無意識が透けて見えるわ」
凛音: 「うぅ……52回って。想像しただけで寒気がしますっ! でも、私が許せないのはウェストハム駅の犯人です! 爆弾失敗して、追いかけてくれた運転士さんを撃つなんて……! 運転士さんは乗客を守ろうとして勇気を出したのに。 犯人、最後は自分で自分を撃ったんですよね? 覚悟があったのか、ただの逃げなのか……。こういう奴が一番ムカつきます!」
佳穂: 「あら、凛音。感情的になるのは構わないけれど、分析が雑よ。 ドネリーの自殺未遂は『覚悟』というより『機能停止(Shutdown)』に近いわね。計画が崩壊し、退路を断たれ、アドレナリンが過剰分泌された果てのショート。 それにしても、市民がテロリストを素手で追いかけるなんて、当時のロンドンっ子の気質(Spirit)は随分とタフだったのね。……貴女みたいに無鉄砲な人間が多かったのかしら?」
凛音: 「むっ! 無鉄砲じゃありません、正義感です! もし私がその場にいたら、パルクールで先回りして、その犯人の顎に膝蹴り入れて確保してますよ! 確保ォォッ!!」
佳穂: 「はいはい。……でも、銃を持った相手に素手で挑むのは『勇気』じゃなくて『蛮勇』よ。 次の現場では、ちゃんと私の指示を待ちなさい。……死なれたら、紅茶を淹れる係がいなくなるもの」
凛音: 「えへへ、心配してくれてるんですね! 了解っす、ボス!」
免責事項
本記事は、過去の報道や公開資料を基に作成しておりますが、一部に筆者の主観的な推測や解釈が含まれます。事実関係の正確性を完全に保証するものではありません。 また、記事内の「姉妹探偵の事件考察」は、自作小説のキャラクターによるフィクションの演出です。あくまで一つの視点・エンターテインメントとしてお読みください。



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