【1893年米国】「殺人ホテル」と「白き都」の終焉――光と影が交錯した年

アメリカ猟奇・異常犯罪史

1893年 米国猟奇殺人・重大事件リスト

1. リジー・ボーデン事件の無罪評決

  • 発生日時(評決): 1893年6月20日(事件発生は1892年8月4日)
  • 事件名: フォールリバー斧殺人事件裁判(The Trial of Lizzie Borden)
  • 犯人: リジー・ボーデン(Lizzie Borden) ※法的には無罪
  • 被害者: アンドリュー・ボーデン、アビー・ボーデン
  • 概要: マサチューセッツ州で発生した資産家夫婦惨殺事件の裁判。娘のリジーが斧で両親を殺害したとして起訴された。状況証拠はリジーの犯行を強く示唆していたが(犯行時の衣服の焼却、アリバイの矛盾など)、弁護団は「日曜学校の教師を務める名家の娘が、これほど残虐な犯行を行うはずがない」というジェンダー・バイアスと階級意識を巧みに利用。 陪審員はわずか1時間半の評議で「無罪」の評決を下した。この評決は全米を揺るがし、未解決事件として現在も語り継がれている。
  • 特異点(M.O./異常性): 【不可視の凶行】 19発(俗説では81発)もの斧による斬撃を受けながら、犯人は返り血を浴びずに、あるいはそれを隠蔽してのけた。この事件の最大の異常性は、犯行そのものよりも「上流階級の女性は怪物になり得ない」という当時の社会通念が、司法の目を曇らせた点にある。

2. ウィリアムズ姉妹殺害(H.H.ホームズ事件)

  • 発生日時: 1893年7月頃
  • 事件名: シカゴ万博「殺人ホテル」事件(The Murder Castle)
  • 犯人: H.H.ホームズ(H.H. Holmes / 本名:Herman Webster Mudgett)
  • 被害者: ミニー・ウィリアムズ(Minnie Williams)、ナニー・ウィリアムズ(Nannie Williams)
  • 概要: シカゴ万博会場の近くに建設された「ワールド・フェア・ホテル(通称:キャッスル)」で発生した連続殺人。ホームズは資産家のミニー・ウィリアムズに言葉巧みに近づき、彼女と妹のナニーをホテルへ誘い込んだ。 二人は、ホームズに資産を譲渡させられた後、7月上旬に消息を絶った。ナニーはガス室で窒息死させられた可能性が高く、ミニーもまた同様の末路を辿ったとされる。彼女たちの服や所持品は、後にホームズの所有物として発見された。
  • 特異点(M.O./異常性): 【殺人の産業化】 ホームズの「城」は、ガス管が引かれた客室、防音壁、地下の焼却炉や酸の槽へと直結するダストシュートを備えた、まさに「殺人工場」だった。彼は快楽と金銭欲(保険金・資産強奪)の両方を満たすために、建築学的なギミックを用いて殺人をシステム化した。ウィリアムズ姉妹の殺害は、そのシステムが最も円滑に稼働した例の一つである。

3. シカゴ市長暗殺事件

  • 発生日時: 1893年10月28日
  • 事件名: カーター・ハリソン・シニア暗殺(Assassination of Carter Harrison Sr.)
  • 犯人: パトリック・ユージン・プレンダーガスト(Patrick Eugene Prendergast)
  • 被害者: カーター・ハリソン・シニア(Carter Harrison Sr. / 当時のシカゴ市長)
  • 概要: 万国博覧会の閉幕式を2日後に控えた夜、自宅でくつろいでいた人気市長カーター・ハリソンが、訪問してきた男に腹部を3発撃たれて死亡した。 犯人のプレンダーガストは新聞配達員で、市長の再選に貢献した(と本人が思い込んでいた)見返りとして、市の法律顧問(Corporation Counsel)に任命されるべきだと妄想していた。その要求が無視されたことへの逆恨みによる犯行だった。
  • 特異点(M.O./異常性): 【パラノイアと祭典の終焉】 華やかな万博の成功を象徴する市長が、「自分には権利がある」と信じ込む孤独な妄想狂によって殺害された。この事件により、予定されていた壮大な閉幕式は中止され、追悼式典へと変更された。「輝ける1893年」は、唐突な暴力によって喪章に包まれて幕を閉じた。

姉妹探偵の事件考察

【担当】

  • 榎本 佳穂(Enomoto Kaho)
  • 九条 芙美音(Kujo Fumine)

佳穂: 「1893年、シカゴ。この年は犯罪史における『特異点(Singularity)』ね。H.H.ホームズという存在は、単なるシリアルキラーではないわ。彼は殺人を『家内制手工業』から『工場生産(Mass Production)』へとパラダイムシフトさせた。建築そのものを凶器(Weaponized Architecture)に変えたという点で、極めて近代的かつ効率的な捕食者よ」

芙美音: 「せやなー。ウチもその『キャッスル』の構造図見たことあるけど、あれほんまにエグいわ。死体を地下に落とすシュートに、石灰槽(Lime pit)に酸のタンク……。殺すだけやなくて、その後の『分解処理』まで動線が完璧に設計されとる。科学者としては、その執着心にゾクゾクするけどな。人間を部品みたいにバラす工程を、毎日ご飯食べるみたいにやっとったんやろ?」

佳穂: 「ええ。彼にとって人間は、感情を持つ有機体ではなく『換金可能な資源』あるいは『実験動物』に過ぎなかった。EQ(感情指数)の欠落が生んだ、ある種の究極的な合理性とも言えるわね。……でも、芙美音。私が最も興味深いと思うのは、彼がそれを『万国博覧会』という文明の祭典の裏で行っていたことよ」

芙美音: 「ん? どういうことや?」

佳穂: 「光が強ければ影も濃くなる。人々が電気や巨大建築という『進歩』に熱狂している間に、彼はその進歩の産物(ガス、防音技術、都市の匿名性)を悪用して『死』を量産していた。都市というシステムそのものが、捕食者の隠れ蓑になることを証明したのよ。……現代の私たちも、笑っていられないわね」

芙美音: 「うわぁ……。佳穂ちゃんにそう言われると、急に周りのビルが全部墓標に見えてきたわ。ほんま、あんたの分析はいつも温度低すぎて凍傷になりそうやで」


免責事項

本記事は、過去の報道や公開資料を基に作成しておりますが、一部に筆者の主観的な推測や解釈が含まれます。事実関係の正確性を完全に保証するものではありません。 また、記事内の「姉妹探偵の事件考察」は、自作小説のキャラクターによるフィクションの演出です。あくまで一つの視点・エンターテインメントとしてお読みください。

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