こんにちは、しらちごです。 今回は、1891年のアメリカ合衆国で発生した、二つの対照的でありながら極めて凶悪な事件を取り上げます。
一つは、市民が正義の名の下に暴徒化し、法の支配を破壊した集団殺人。 もう一つは、ロンドンの悪夢が海を渡ってきたかのような、孤独で猟奇的な快楽殺人。
19世紀末、近代化するアメリカ社会の歪みが、恐ろしい形で噴出した年です。
1891年 米国凶悪殺人事件ファイル
1. ニューオーリンズ・イタリア人リンチ事件
- 発生日: 1891年3月14日
- 場所: ルイジアナ州ニューオーリンズ
- 概要: 前年(1890年)に起きたヘネシー市警本部長暗殺事件の裁判で、被告とされたイタリア系移民の一部に無罪判決が出た翌日に発生した事件。 「正義が行われていない」と扇動された数千人の市民が暴徒化して刑務所を襲撃。収監されていたイタリア系移民11人を引きずり出し、銃殺、および街灯に吊るして処刑(リンチ)しました。 これはアメリカ史上最大のリンチ事件の一つであり、犠牲者の中には裁判で無罪が確定していた者も含まれていました。法の適正手続き(デュー・プロセス)が完全に崩壊し、集団心理(モブ・メンタリティ)が殺意へと変換された最悪のケースです。
2. キャリー・ブラウン殺害事件(「シェイクスピア」殺し)
- 発生日: 1891年4月24日
- 場所: ニューヨーク、イースト・リバー・ホテル
- 概要: 60歳ほどの娼婦キャリー・ブラウン(通称シェイクスピア、詩を朗読する癖があったため)が、ホテルのベッドで惨殺された事件。 彼女の遺体はロンドンの「切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)」の手口を彷彿とさせる無残な切り傷を受けていました。腹部は十字に切り裂かれ、腸の一部が引き出されていました。 当時、ニューヨーク市警は「アミール・ベン・アリ(通称フレンチィ)」というアルジェリア人を逮捕・有罪にしましたが、証拠は乏しく、後に冤罪の可能性が高いとされています。現代のプロファイリングでは、切り裂きジャック本人が渡米していた、あるいは模倣犯(コピーキャット)による犯行という説が根強く残っています。
3. H.H.ホームズの暗躍(ジュリア・コナー母娘の失踪)
- 発生時期: 1891年12月(クリスマス前後)
- 場所: イリノイ州シカゴ
- 概要: シカゴの「マーダー・キャッスル」の主、H.H.ホームズの愛人であったジュリア・コナーと、その娘パール(8歳)が忽然と姿を消しました。 ホームズは周囲に「彼女は実家に帰った」と説明しましたが、実際にはクリスマスの時期に城の地下室で殺害されたと見られています。後に地下室からは、子供の骨の一部が見つかっています。 「万国博覧会」に向けた大量殺人の序章となる、冷酷な家族殺しです。
4. ワラワラ刑務所暴動と集団自殺未遂
- 発生日: 1891年
- 場所: ワシントン州ワラワラ
- 概要: 殺人事件そのものではありませんが、当時の刑務所の過酷さと囚人の異常心理を示す事件。 過酷な扱いに耐えかねた囚人たちが脱獄を計画するも失敗し、絶望の中で集団自殺を図ったり、看守を襲撃したりする暴動が発生。当時のフロンティア刑務所がいかに「地獄」であったかを示す記録です。
姉妹探偵の事件考察
登場人物
- 榎本 佳穂(えのもと かほ): 英国UCLで犯罪科学の博士号を取得した天才探偵。IQ240。冷徹なプロファイリングを得意とする。
- 榎本 彩心(えのもと いろは): 佳穂の妹で助手。東大法学部在学中。高い共感能力(エンパス)を持つ。
佳穂: 「……1891年。群衆という名の『怪物』と、孤独な『怪物』が対比的な年ね。 特にニューオーリンズのリンチ事件は、社会心理学における**『没個性化(Deindividuation)』**の教科書的な事例よ。 個人であれば良識ある市民でも、集団の中に埋没し、責任が分散されると、もっとも残酷な処刑人へと変貌する。彼らは『正義』を行っていると信じている分、快楽殺人犯よりもタチが悪いわ」
彩心: 「……11人も殺されたなんて。しかも、無罪になった人もいたんでしょ? 裁判の結果が気に入らないからって、みんなで刑務所を襲うなんて、法治国家じゃないよ……。怖すぎる」
佳穂: 「法の不全が招いた悲劇ね。 一方で、ニューヨークのキャリー・ブラウン事件。これは興味深いわ。 被害者の腹部に刻まれた十字の傷、そして過剰殺傷(オーバーキル)。 これは典型的な**『ピクウェリズム(Piqueron)』**、あるいはナイフによる性的代償行為の極致よ。 当時のNY市警は早急に犯人を仕立て上げたけれど、プロファイル的には『切り裂きジャック』と同一犯、あるいはその詳細を知り尽くした模倣犯(コピーキャット)の可能性が極めて高い。 ロンドンのホワイトチャペルでの最後の犯行が1888年(あるいは1891年2月のフランシス・コールズ事件)。時系列的にも、彼が海を渡った可能性はゼロではないわ」
彩心: 「ジャック・ザ・リッパーがアメリカに来てたかもしれないの……? お姉ちゃん、それってつまり、未解決のまま逃げ切ったってことだよね。 H.H.ホームズも、この時期にクリスマスの日に親子を殺してるし……。 なんだか、19世紀の終わりって、すごく暗くて冷たい空気が流れてる気がする。……温かいコーンスープでも飲んで、温まりたい気分だよ」
佳穂: 「……そうね。クルトンを多めに入れましょう。 歴史の闇(ダークマター)を直視し続けるには、多少のカロリーが必要よ」
本記事は、過去の報道や公開資料を基に作成しておりますが、一部に筆者の主観的な推測や解釈が含まれます。事実関係の正確性を完全に保証するものではありません。 また、記事内の「姉妹探偵の事件考察」は、自作小説のキャラクターによるフィクションの演出です。あくまで一つの視点・エンターテインメントとしてお読みください。



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