【1976年4月〜6月】トランクの中の歌声と、黒いピーナッツの正体

国内殺人事件簿

こんにちは、ブログ「しらちご」専属ライターです。 今回は1976年(昭和51年)第2四半期の日本を振り返ります。

この季節、日本中が「ロッキード」という巨大な黒い霧に包まれていました。国会では証人喚問が続き、国民の怒りが渦巻く中、芸能界では紅白歌手による衝撃的な殺人が発覚。さらに九州では、後に冤罪論争も巻き起こる凄惨な一家殺害事件が発生しています。 表舞台の華やかさと、裏側のドロドロとした欲望が極端なコントラストを描いた、1976年初夏の事件ファイルをご覧ください。


1976年4月〜6月 日本・重要犯罪リスト

1. 克美しげる愛人絞殺事件

  • 発生日時: 1976年5月6日(遺体発見は5月8日)
  • 事件名: 克美しげる事件
  • 場所: 東京都(遺棄現場は羽田空港)
  • 犯人: 克美しげる(歌手 / 当時38歳)
  • 被害者: 35歳女性(元ホステス・愛人)
  • 概要: 『エイトマン』の主題歌などで知られる人気歌手・克美しげるが、愛人の女性を絞殺。遺体を自身の愛車のトランクに隠したまま、北海道でのキャンペーンやテレビ出演を2日間にわたりこなしていた。 5月8日、羽田空港の駐車場に停められた車から異臭と血痕が発見され、トランク内の遺体が露見。克美は羽田空港署に逮捕された。動機は、愛人との結婚を迫られたことによる痴情のもつれに加え、借金苦による精神的重圧だったとされる。
  • プロファイリング要素(仮面の告白): 【死体との巡業】 華やかなスポットライトを浴びて笑顔で歌う歌手の、そのすぐ背後のトランクに冷たい死体があるという異常な状況。犯行後の「乖離(Dissociation)」状態が顕著であり、彼は「歌手としてのペルソナ」を維持することで、殺人者という現実から目を背けようとした。芸能界という虚構の世界が、現実感覚を麻痺させた典型例である。

2. 福岡・飯塚一家4人殺害事件

  • 発生日時: 1976年6月13日
  • 事件名: 飯塚事件(秋好英明事件とも呼ばれるが、別件の「飯塚事件(1992年)」とは異なる)
  • 場所: 福岡県飯塚市
  • 犯人: 秋好英明(当時28歳 / 死刑確定・執行済)
  • 被害者: 義母、妻の連れ子2人、義弟の計4名
  • 概要: 深夜、犯人が自宅で就寝中の義母ら一家4人を柳刃包丁で次々と刺殺。妻(当時24歳)も重傷を負ったが生き延びた。 犯人の秋好は逮捕後、「妻と共謀した」「妻に頼まれた」と主張したが、裁判では妻は被害者と認定され、秋好の単独犯行として死刑が確定した。この事件は、極貧の生い立ちや複雑な家庭環境が背景にあり、島田荘司のノンフィクション小説『秋好英明事件』のモデルとなったことでも知られる。
  • プロファイリング要素(大量殺人の心理): 【ファミリー・アニヒレーション(家族抹殺)】 家族という最も親密な対象を一晩で全滅させる「拡大自殺」の一種とも取れるが、生存者(妻)がいる点や、犯人の「責任転嫁」的な言動から、強い他責的攻撃性が窺える。自己の生活破綻の原因をすべて周囲の家族に投影し、それらを物理的に排除することでリセットを図ろうとした短絡的な破壊衝動である。

3. 全日空社長逮捕(ロッキード事件)

  • 発生日時: 1976年6月22日〜
  • 事件名: ロッキード事件(丸紅・全日空ルート捜査)
  • 場所: 東京都
  • 被疑者: 若狭得治(全日空社長 / 当時)、他 丸紅幹部ら
  • 概要: 米国ロッキード社の航空機売り込みを巡る大規模汚職事件で、東京地検特捜部がついに全日空のトップにメスを入れた。若狭社長らが外為法違反や偽証容疑で逮捕されたこの時期、新聞やテレビは連日「ピーナッツ(賄賂の隠語)」「ハチの一刺し」といった流行語で溢れかえった。 これは物理的な殺人ではないが、日本の政治経済システムそのものが「腐敗」という病に冒されていたことを証明する、国家規模の犯罪であった。
  • プロファイリング要素(構造汚職): 【ホワイトカラー・クライムの頂点】 直接手を下さず、書類と電話一本で巨額の金と権力を動かす犯罪。実行犯(贈賄者)たちに罪の意識は希薄であり、「会社のため」「国益のため」という大義名分(Rationalization)によって倫理観が完全に麻痺している。一般市民の殺人が「情動」によるものなら、彼らの犯罪は「冷徹な計算」によるものである。

4. 横浜市役所ガス爆発事故(※事件性も疑われた惨事)

  • 発生日時: 1976年6月16日
  • 事件名: 横浜市役所ガス爆発
  • 場所: 横浜市役所
  • 被害者: 職員ら多数死傷
  • 概要: 横浜市役所の地下機械室で大規模なガス爆発が発生。この時期は過激派による爆弾テロ(3月の北海道庁爆破など)が頻発していたため、当初はテロの可能性も強く疑われ、市民はパニックに陥った。最終的にはガス漏れによる事故と断定されたが、社会全体が「いつどこで爆発が起きてもおかしくない」という極度の緊張状態(Paranoia)にあったことを象徴する出来事である。

姉妹探偵の事件考察

【担当】

  • 榎本 佳穂(Enomoto Kaho)
  • 水谷川 芽瑠(Miyagawameru Meru / 警察庁キャリア・警視正)

芽瑠: 「1976年の日本……。この国の『膿』が一気に出た時期ですね。 ロッキード事件で政治家や経営者が次々と逮捕される一方で、歌手が愛人をトランクに詰めて歌っていた。 上流階級(Upper Class)も芸能界も、皮を剥げば同じ『欲の塊』。私たち警察官僚にとっては、掃除しても掃除してもゴミが湧いてくる、悪夢のような季節だったでしょうね」

佳穂: 「ええ。特に『克美しげる事件』は象徴的よ。 彼は『エイトマン』――つまり正義のヒーローの歌を歌いながら、背中には死体を背負っていた。 心理学でいう**『二重拘束(Double Bind)』の具現化**ね。虚構の自分(スター)を守るために、現実の自分(愛人の男)を殺さざるを得なかった。 でも芽瑠さん、私が気になるのは『トランクの中の遺体』よりも、彼がその状態で2日間も笑顔でテレビに出ていたという事実よ」

芽瑠: 「ふふ、佳穂さんらしい着眼点ですわ。 それは一種の『過剰適応(Over-adaptation)』かしら? 異常な状況下でも、カメラを向けられれば条件反射で笑顔を作ってしまう。芸能人という生き物が、パブロフの犬のように調教されている証拠……あるいは、恐怖で思考停止していただけかも」

佳穂: 「おそらく後者ね。人間は、処理しきれない現実を前にすると、日常のルーチンに逃げ込む習性がある。 そしてロッキード事件の若狭社長たちも同じ。 『総理(田中角栄)の指示だから』『会社のためだから』……思考停止してルーチン(贈賄)をこなした結果、国家そのものを腐らせた。 トランクの中の死体も、5億円の賄賂も、彼らにとっては『見たくない現実』として封印された。……腐臭が漏れ出すまではね」

芽瑠: 「うふふ。腐臭が漏れたら、私たち警察の出番ですわ。 でも、消臭剤を撒くだけじゃダメ。発生源を断たないと。 ……佳穂さん、貴女の『鼻』は、今の永田町の腐臭も嗅ぎ分けられますこと?」

佳穂: 「……遠慮しておくわ。私の鼻は、もっと個人的で、切実な血の匂いのためにあるの。 政治のドブさらいは、キャリア組のエリート様にお任せするわ」


免責事項

本記事は、過去の報道や公開資料を基に作成しておりますが、一部に筆者の主観的な推測や解釈が含まれます。事実関係の正確性を完全に保証するものではありません。 また、記事内の「姉妹探偵の事件考察」は、自作小説のキャラクターによるフィクションの演出です。あくまで一つの視点・エンターテインメントとしてお読みください。

関連動画: 克美しげる事件 当時の報道 この動画は、1976年に発生した克美しげる事件の当時のニュース映像であり、事件の衝撃と当時の芸能界の反応を伝えています。

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