【英国犯罪史】1975年7月〜9月:灼熱の夏、砕かれた音楽と「切り裂き魔」の胎動

英国殺人事件簿

こんにちは、しらちごです。 今回は、1975年の第3四半期(7月〜9月)にイギリスで発生した、歴史に残る凶悪事件を振り返ります。

この年の夏、イギリスは記録的な猛暑に見舞われました。しかし、その暑さ以上に人々を苦しめたのは、終わりの見えないテロリズムの恐怖と、静かに、しかし確実に忍び寄る「連続殺人鬼」の影でした。 特にこの時期は、音楽を愛する若者たちが標的になった悲劇や、未解決のまま残る少女殺害事件など、胸が痛む事件が多発しています。

1975年7月〜9月 イギリス凶悪殺人事件ファイル

1. マイアミ・ショーバンド虐殺事件

  • 発生日: 1975年7月31日
  • 場所: 北アイルランド、ダウン州(ブスカイア近郊)
  • 概要: アイルランド全土で人気を誇っていたキャバレー・バンド「マイアミ・ショーバンド」のメンバーが、ライブの帰りに偽の検問所で襲撃された事件。 英軍の制服を着たUVF(アルスター義勇軍)のテロリストたちが、バンドのワゴン車を停車させ、爆弾を仕掛けようとしました。しかし爆弾が誤って早期爆発し、混乱の中でテロリストが無差別に発砲。人気のあったフラン・オトゥールを含むメンバー3人が射殺されました。 「アイルランドのビートルズ」とも呼ばれた、人々に喜びを届けるミュージシャンが標的になったことで、紛争の残酷さが際立った事件です。

2. バヤルド・バー襲撃事件

  • 発生日: 1975年8月13日
  • 場所: 北アイルランド、ベルファスト(シャンキル・ロード)
  • 概要: IRA(アイルランド共和軍)暫定派の部隊が、プロテスタント地区のパブ「バヤルド・バー」を襲撃した事件。 犯人グループは車から降りてパブの入り口で銃を乱射し、爆弾を投げ込みました。市民4人とUVFメンバー1人の計5人が死亡、50人以上が負傷しました。 死者の中には若い女性も含まれていました。報復が報復を呼ぶ、血塗られた夏の象徴的な事件です。

3. トレーシー・ブラウン襲撃事件(ヨークシャー・リッパーによる未遂)

  • 発生日: 1975年8月27日
  • 場所: ウェスト・ヨークシャー、シルスデン
  • 概要: 14歳の少女トレーシー・ブラウンが、夜道を一人で歩いていたところを男に襲われた事件。 男は背後からハンマーで彼女の頭部を何度も殴打しましたが、通りかかった車のライトに驚いて逃走しました。トレーシーは奇跡的に一命を取り留めました。 当時は単独の暴行事件と思われていましたが、後に犯人がピーター・サトクリフ(ヨークシャー・リッパー)であることが判明。彼が最初の殺人(ウィルマ・マッキャン殺害)を犯すわずか2ヶ月前の出来事であり、彼が殺人の手応えを掴んだ「リハーサル」だったと言われています。

4. リン・ウィードン殺害事件(未解決・DNAリンクあり)

  • 発生日: 1975年9月3日(襲撃)、9月10日(死亡)
  • 場所: 西ロンドン、ハウンズロー
  • 概要: 16歳の女子学生リン・ウィードンが、自宅近くの路地で夜間に襲撃された事件。 彼女は鈍器で頭を殴られ、フェンス越しに発電所の敷地内へ投げ込まれた後、喉を鋭利な刃物で切られました。彼女は一週間後に死亡しました。 この事件は長年未解決でしたが、DNA鑑定により、同年3月に起きた「イヴ・ストラットフォード殺害事件(バニーガール殺人)」と同一犯によるものと断定されています。犯人は半年間の冷却期間(クーリング・オフ)を経て、再び狩りを行っていたのです。

5. ロンドン・ヒルトンホテル爆破事件

  • 発生日: 1975年9月5日
  • 場所: ロンドン、メイフェア
  • 概要: ロンドンの高級ホテル、ヒルトンホテルのロビーでIRAの仕掛けた爆弾が爆発した事件。 2人が死亡、63人が負傷しました。事前の警告電話から爆発までの時間が短く、避難が間に合いませんでした。 首都ロンドンの富の象徴である場所を狙ったこのテロは、紛争が遠い場所の出来事ではなく、日常のすぐ隣にある脅威であることをロンドン市民に突きつけました。

姉妹探偵の事件考察

登場人物

  • 榎本 佳穂(えのもと かほ): 英国UCLで犯罪科学の博士号を取得した天才探偵。IQ240。冷徹なプロファイリングを得意とする。
  • 榎本 彩心(えのもと いろは): 佳穂の妹で助手。東大法学部在学中。高い共感能力(エンパス)を持つ。

佳穂: 「……1975年の晩夏。英国犯罪史における『悪夢の幕開け』前夜と言えるわね。 特に注目すべきは、8月のトレーシー・ブラウン襲撃事件よ。 犯人のピーター・サトクリフは、この段階ではまだ『殺害』には至っていない(完遂していない)。でも、ハンマーという凶器の選定、背後からの急襲というM.O.(手口)は既に確立されているわ。 彼はこの襲撃で得た興奮と反省をフィードバックし、2ヶ月後の10月、最初の殺人(ウィルマ・マッキャン事件)へと**『進化(エスカレーション)』**することになるの」

彩心: 「進化なんて……そんな言葉、聞きたくないよ。 14歳の女の子をハンマーで殴るなんて、それだけで十分恐ろしいのに、それが『練習』だったってこと? それに、マイアミ・ショーバンドの人たち……。音楽でみんなを楽しませていた人たちが、検問だと思って車を止めたら殺されちゃうなんて。 『なんで?』って気持ちしかないよ。理不尽すぎる」

佳穂: 「テロリズムにおける標的選定に、個人の善悪は関係ないの。彼らにとっては『象徴』を破壊することが目的なのよ。 そして、9月のリン・ウィードンさんの事件。これは3月のバニーガール事件と繋がっているわ。 半年の**『冷却期間(Cooling-off Period)』**があったけれど、喉を切り裂くという『署名(シグネチャー)』は一貫している。 犯人はおそらく、社会に溶け込んで普通に暮らしている人間よ。衝動を半年間抑え込み、そして爆発させた。……捕まっていないのが不気味ね」

彩心: 「……普通に暮らしてる中に、そんな怪物が混ざってるなんて。 ロンドンのヒルトンホテルで爆発があったり、女の子が襲われたり……。この年の夏は、暑さだけじゃなくて、恐怖で息が詰まりそうだったんだろうな。 お姉ちゃん、せめてリンさんの事件、いつか解決するといいね」

佳穂: 「DNAという『科学の証言者』は、決して嘘をつかないし、忘れない。 いつか必ず、その扉(コールドケース)が開く日が来ると信じましょう」


本記事は、過去の報道や公開資料を基に作成しておりますが、一部に筆者の主観的な推測や解釈が含まれます。事実関係の正確性を完全に保証するものではありません。 また、記事内の「姉妹探偵の事件考察」は、自作小説のキャラクターによるフィクションの演出です。あくまで一つの視点・エンターテインメントとしてお読みください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました