こんにちは、しらちごです。 今回は、昭和50年(1975年)の第3四半期(7月〜9月)に日本国内で発生した事件を振り返ります。
春に連続企業爆破事件の犯人グループが検挙され、大規模な爆弾テロの脅威は去ったかに見えました。しかし、行き場を失った暴力の矛先は、同じ思想を持つはずの「仲間」や、全く無関係な「皇室」、そして生まれたばかりの「小さな命」へと向かいました。 政治の季節が終わり、陰湿な「個の犯罪」の季節が始まろうとしていた、不穏な夏です。
1975年7月〜9月 日本凶悪殺人事件ファイル
1. ひめゆりの塔事件(皇太子明仁親王襲撃事件)
- 発生日: 1975年7月17日
- 場所: 沖縄県糸満市
- 概要: 沖縄国際海洋博覧会に合わせて沖縄を訪問していた皇太子明仁親王(現・上皇)と美智子妃殿下に、過激派の男2人が火炎瓶を投げつけたテロ事件。 犯人は「沖縄解放同盟」と「共産主義者同盟」のメンバーで、地下壕に潜伏し、献花中の親王夫妻の足元へ火炎瓶を投擲しました。 火炎瓶は炎上しましたが、夫妻に怪我はありませんでした。戦後初めて皇族に対して直接的な殺意が向けられた事件として、日本中に衝撃を与えました。犯人たちの「独善的な正義」が、慰霊の場を冒涜した瞬間でした。
2. 大阪・コインロッカー嬰児死体遺棄事件(「コインロッカーベイビー」の深刻化)
- 発生時期: 1975年7月〜9月(断続的に発生)
- 場所: 大阪・梅田駅ほか、全国の主要駅
- 概要: この時期、全国の駅のコインロッカーから嬰児の遺体が発見される事件が急増しました。 1973年頃から散見されていましたが、1975年には社会問題化し、後の1980年代の爆発的増加(コインロッカーベイビー現象)の前兆となりました。 生まれたばかりの我が子を、冷たい鉄の箱に入れて鍵をかける。都市の匿名性と、貧困や育児への孤立が生んだ、静かで猟奇的な「殺人」です。死因の多くは窒息や凍死でした。
3. 革労協・内ゲバ殺人事件(「水本事件」報復の連鎖)
- 発生時期: 1975年夏
- 場所: 東京都内、神奈川県内
- 概要: 新左翼党派である「革労協(解放派)」と「革マル派」などの間で、血で血を洗う内部抗争(内ゲバ)が激化していた時期です。 6月に革労協の書記長が殺害されたことへの報復として、7月から9月にかけて、対立党派のメンバーを狙った襲撃が繰り返されました。 彼らは鉄パイプやバールで武装し、通学・通勤途中の学生や労働者の頭部を執拗に殴打して殺害しました。かつて理想を語り合った若者たちが、同じ言葉を話す人間を「殲滅対象」と呼び、物のように破壊する。まさに狂気の沙汰でした。
4. 八王子・主婦強盗殺人事件
- 発生日: 1975年8月
- 場所: 東京都八王子市
- 概要: 白昼、団地に住む主婦が刃物で刺殺され、金品を奪われた事件。 当時の団地は「密室の集合体」であり、隣近所の付き合いが希薄になり始めていました。誰にも気づかれずに犯行が行われ、犯人が悠々と逃走したこの事件は、ニュータウンの死角と脆弱性を浮き彫りにしました。
5. 鎌倉・女子大生バラバラ殺人事件(※遺体発見に関連する時期)
- 発生日: 1975年9月(捜査進展・報道)
- 場所: 神奈川県鎌倉市、山梨県
- 概要: 行方不明になっていた女子大生の遺体の一部が山中で発見された事件。 交際相手の男が逮捕されました。男は別れ話のもつれから彼女を絞殺し、遺体を切断して複数の場所に遺棄していました。 「愛するがゆえの犯行」という古典的な動機ですが、遺体を細かく損壊するという行為には、独占欲を超えた異常な執着と、証拠隠滅に対する冷徹な計算が見え隠れします。
姉妹探偵の事件考察
登場人物
- 榎本 佳穂(えのもと かほ): 英国UCLで犯罪科学の博士号を取得した天才探偵。IQ240。冷徹なプロファイリングを得意とする。
- 榎本 彩心(えのもと いろは): 佳穂の妹で助手。東大法学部在学中。高い共感能力(エンパス)を持つ。
佳穂: 「……1975年の夏。日本の犯罪史における『イデオロギーの腐敗』と『都市型犯罪の萌芽』が交錯した季節ね。 特に内ゲバの激化は、社会心理学における**『集団極性化(Group Polarization)』**の最悪のケーススタディよ。 彼らは閉鎖的な集団の中で過激な思想を増幅させ、対立する人間を『虫』や『物体』として再定義(非人間化)した。だからこそ、鉄パイプで人の頭を砕くという野蛮な行為に、何の痛みも感じなくなっていたの」
彩心: 「……同じ大学生とか、若い人同士で殺し合うなんて、本当に意味がわからないよ。 それに、ひめゆりの塔で火炎瓶を投げるなんて……。慰霊のための場所なのに。どうしてそんな悲しいことができるの?」
佳穂: 「彼らにとって、他者の悲しみや場所の神聖さはノイズでしかないのよ。あるのは自分の『正義』を誇示したいという自己顕示欲だけ。これを**『テロリズムの劇場化』**と言うわ。 でも、私がより深刻な闇を感じるのは、コインロッカーの事件ね。 これは政治的な思想なんてない、普通の人々の中に生まれた『静かな狂気』だわ」
彩心: 「赤ちゃんをロッカーに入れるなんて……。泣き声が聞こえちゃうかもしれないのに、冷たい箱の中に置いていくお母さんの気持ちを想像すると、怖くて、悲しくて、やりきれないよ。 どうして誰も助けてあげられなかったのかな」
佳穂: 「都市の匿名性が、罪悪感を希釈(ディリューション)させたのね。 『鍵をかければ、問題ごとなかったことになる』という安易で残酷な思考停止(ショートカット)。 1975年は、日本人が豊かさと引き換えに、隣人の顔も、小さな命の重さも見失い始めた……そんな『心の冬』の始まりだったのかもしれないわ」
彩心: 「心の冬……。真夏なのに、なんだか背筋が寒くなってきた。 お姉ちゃん、今日は冷たいお茶じゃなくて、温かいハーブティーにしようか。少しでも心を温めたいから」
佳穂: 「……ええ、そうね。カモミールにしましょう。鎮静効果が必要なレベルの鬱屈した時代だわ」
本記事は、過去の報道や公開資料を基に作成しておりますが、一部に筆者の主観的な推測や解釈が含まれます。事実関係の正確性を完全に保証するものではありません。 また、記事内の「姉妹探偵の事件考察」は、自作小説のキャラクターによるフィクションの演出です。あくまで一つの視点・エンターテインメントとしてお読みください。



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