【未解決の迷宮】ノーフォーク「首なし死体」事件 —— ネグリジェの女性は誰だったのか? 奪われた顔と「公爵夫人」の謎

深掘り事件簿

1974年(昭和49年)8月27日。 イギリス東部、ノーフォーク州の静かな村「コックリー・クレイ(Cockley Cley)」で、ある凄惨な発見がされました。

今回の事件ファイルは、半世紀が過ぎた今もなお、被害者の名前さえ判明していない英国屈指の未解決事件、通称「ノーフォークの首なし死体(The Norfolk Headless Body)」を徹底解剖します。

なぜ彼女は首を奪われたのか? そして捜査線上に浮かんだ、ある「消えた女性」の正体とは。

1. 藪の中の悪夢:発見

第一発見者は、地元の農場で働く19歳の青年でした。 彼がコックリー・クレイの荒れ地を歩いていると、藪の中に不自然に置かれた「何か」を見つけました。 それは、National Cash Registers(NCR)というロゴが入ったプラスチック製のシートで包まれていました。

彼がシートをめくり上げた瞬間、目に飛び込んできたのは、腐敗が進んだ女性の遺体でした。 遺体は両手足を特殊なロープで後ろ手に縛られ、身に着けていたのはピンク色のフリル付きネグリジェ(マークス&スペンサー製)だけ。

そして何より異様だったのは、「頭部が切断され、持ち去られていた」ことでした。

2. 徹底的な身元の隠蔽

警察は大規模な捜査を開始しましたが、犯人の異常なまでの「用心深さ」に直面します。

  • 頭部の欠如: 被害者の顔や歯型(歯科記録)による身元特定を防ぐためと考えられます。頭部は現在に至るまで発見されていません。
  • 指紋の採取不能: 遺体は死後数週間が経過しており、腐敗が激しく指紋の採取は困難でした。
  • 特殊な拘束具: 縛っていたロープは、農業機械用の非常に特殊な「4本撚り」の紐で、製造元は特定されましたが、犯人へは辿り着けませんでした。
  • NCRのシート: 遺体を包んでいたシートは、NCR社(金銭登録機メーカー)の製品カバーでしたが、これも決定的な手掛かりにはなりませんでした。

犯人は、彼女が「誰であるか」を知られることを極端に恐れていたのです。

3. 最新科学が暴いた「彼女」のプロフィール

事件から30年以上経った2008年、警察は「モン・トン作戦(Operation Monton)」と称して遺体を掘り起こし、最新のDNA鑑定と同位体分析を行いました。 そこで驚くべき事実が判明します。

  • 年齢: 23歳~35歳前後。
  • 出自: 彼女はイギリス人ではなく、中央ヨーロッパ(デンマーク、ドイツ、オーストリア周辺)で育った可能性が高い。
  • 食生活: 魚や海産物を多く摂取していた。
  • 出産歴: 骨盤の形状から、少なくとも一度は出産経験がある(子供がいた可能性が高い)。

この科学捜査の結果は、ある一つの有力な捜査説を強力に後押しすることになりました。

4. 有力説:「公爵夫人(The Duchess)」の消失

捜査員たちの間で語られる最も有力な説。それは、被害者が「ザ・ダッチェス(公爵夫人)」と呼ばれていた女性ではないか、というものです。

当時、ノーフォーク州の港町グレート・ヤーマス(Great Yarmouth)には、そう呼ばれるデンマーク出身とされる娼婦がいました。 彼女は港湾労働者や船員を相手にしていましたが、1974年の8月頃、忽然と姿を消しています。 「公爵夫人」は自分の荷物をすべて部屋に残したままいなくなっており、その特徴(年齢、出身地推定)は、遺体の分析結果と不気味なほど一致します。

彼女は故郷に子供を残して出稼ぎに来ていたのか? そして客として出会った何者かに殺害されたのか? もし彼女が「公爵夫人」なら、犯人は港で彼女を知っていた人物であり、身元が割れるのを防ぐために首を持ち去ったという筋書きが成り立ちます。

5. 永遠のミステリー

警察はこの「公爵夫人」説に基づいて捜査を続けていますが、彼女の本名はわかっていません。当時の港湾記録や関係者の記憶も曖昧で、確定的な証拠は得られていないのです。

1974年の夏、ピンクのネグリジェ姿で異国の地の土に還った女性。 彼女の「顔」と「名前」は、犯人によって永遠に闇に葬られてしまいました。 イギリスの捜査チームは今も、彼女の家族を探し出すため、DNA情報の照合を諦めてはいません。


【事件データ】

  • 発見日: 1974年8月27日
  • 場所: イギリス・ノーフォーク州コックリー・クレイ
  • 被害者: 身元不明女性(23~35歳推定)
  • 死因: 不明(首切断は死後と推測される)
  • 特徴: ピンクのネグリジェ、NCRのシート、農業用ロープ

(姉妹探偵のメモ)

【姉の推理】 「『頭を持ち去る』……これは強烈なメッセージよ。怨恨で顔を破壊するケースもあるけど、今回は『身元隠し』の線が濃厚ね。ピンクのネグリジェ姿だったってことは、彼女は犯人と親しい関係、あるいは屋内で襲われてそのまま運ばれた可能性が高いわ。NCRのシートや農業用ロープといった『その場にあった業務用品』で梱包しているあたり、計画的というよりは、突発的な犯行後に必死で隠蔽工作をしたような焦りを感じるわ」

【妹の感想】 「『公爵夫人』って呼ばれてたのに、名前もわからずに冷たい藪の中に捨てられちゃうなんて……。海を渡ってイギリスに来て、故郷に子供がいたかもしれないのに。50年も誰も迎えに来ないなんて悲しすぎるよ。いつかDNA鑑定で、せめて名前だけでも見つかってほしいな」


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